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レオとアストラの孤独

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子供の頃に見た光景が、シャッターを切ったように脳裏に焼き付いているということがある。
「ウルトラマンレオが弟のアストラを庇って、ウルトラ兄弟に総攻撃される」というショッキングなシーンが、わたしの中ではずっと残っていて、前後の細かい設定は覚えていないものの、この1シーンを憶えているせいか、レオとアストラ兄弟には孤独と孤立のイメージが付きまとう。

漫画「北斗の拳」を「神話となった兄弟喧嘩」と評したひとがいるが、ウルトラマンレオの場合、それとはちょっと違う。
レオとアストラはこのときウルトラ兄弟では無かったからだ。

今回、改めて三十年ぶりぐらいにこの物語をDVDで見ていろんなことが分かった。
そもそもレオ兄弟は「出身」からしてウルトラでは無い。
ゾフィ、ウルトラマン、セブン、エース、タロウ達いわゆるウルトラ兄弟はM78星雲の出身。
それに対しレオとアストラは獅子座L77星雲の出身。つまり赤の他人なのだ。ちなみレオとアストラの故郷はマグマ星人の侵略のよって滅亡しているため、彼ら兄弟は設定からして故郷の無い悲劇的な生い立ちである。

この知識を持って、ウルトラ兄弟とレオ兄弟の争いに着目すると、まるで本家エリート一家対分家のみなしご兄弟というとても子供たちのヒーロー達とは思えない「大人びた構図」が見えてくる。

そしてなぜ、ウルトラ兄弟がレオ兄弟を攻めるに至ったかについては、ウィキペディア等に詳しいが、簡単に言ってしまえば、自分達の故郷M78星雲をアストラ(実は偽物)に襲われた兄弟達が、「アストラを殺す」と言って、地球まで追いかけてくるのだ。
このときレオは弟の無実を信じてあくまでアストラを庇おうとする。
攻め立てるのは、ゾフィ、初代ウルトラマン、新マン、エースというウルトラ4人衆。
(タロウはなぜかいない。彼にはそういう汚れ役はさせないという暗黙のルールがあるのか?)
セブンことモロボシダンは中立の立場を守ろうと苦悩する。
エグいのは、ウルトラ4兄弟がガチでレオを倒しにいっているとしか思えない、4人がかりの光線攻撃。
ウルトラ兄弟がここまでマジのなる大きな理由はもう1つあり、アストラ(繰り返すが偽物)がM78星雲から奪ったウルトラキー(わかりやすい大きな鍵)によって、制御機能を失った星雲がいままさに地球と激突しようとしているからなのだが、わたしの印象としてはこのときウルトラ4兄弟は「地球の平和なんかそっちのけ」で、自分達の星とメンツを守るために、レオ兄弟を「殺し」にいっている感じがする。
さんざん地球の平和を守ってきたはずのウルトラ兄弟の星そのものが地球史上最大の脅威となるという設定は実にシュールだが、実はこのとき人間側では地球に接近しようとするM78星雲を爆弾で追撃しようと考えているのだから、「状況が変われば正義は変わる」という我々が歴史の教科書で本来学ばなければいけない真理が、そこではきちんと描かれているのだ。
更にいうと、ウルトラの星爆撃の陣頭指揮を取るのは、あろうこうとかモロボシダンなのだ。
つまり、彼は親兄弟の暮らす故郷そのものを爆破するという大任を負わされるのである。

このダイナミックなストーリーはレオの38話、39話(最終回でも何でもない)の合わせて1時間の話なのだけど、すったもんだの末、地球もM78星雲も無事で、その立役者となったレオとアストラ(これは本物のほう)は、なんとウルトラキングの超法規的英断により、晴れてウルトラ兄弟に加わることになり、「殺しあった後、兄弟」というヤクザ映画的決着となる。

昔、あるひとに「孤独と孤立の違いは何だと思う?」と聞かれたとき、わたしは咄嗟に「レオとアストラ」と答えた。
ウルトラ兄弟になったことを素直に喜ぶレオのノーテンキさには、正直なところ孤独なイメージとはだいぶ離れている。
しかし、ウルトラ兄弟にあらぬ疑いをかけられ、それでも兄レオのピンチには駆けつけ、仕事が終わると、行方をくらますアストラの姿には孤独を越えた哀しい孤高を感じた。
よーく考えてみると、アストラだけが一度もブレていない。
孤独というのはもしかしたら、そういうものなのかもしれない。
by tabijitaku | 2010-08-15 21:17 | 私が私であるための1973枚(絵)


中庭、それは外。でも内側


by tabijitaku

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