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西瓜

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週末の時間のほとんどをわたしは自治会という不思議な集まりに捧げてしまった。
地区の納涼祭があり、その準備にかり出されたのである。
普段、仕事を理由に会合にまったく参加していない後ろめたさもあり、週末は割り切って、言われるがままに机を運んだり、交通警備にあたったりした。
もしかしたら、わたしのような「にわか参加者」が多いのか、どう考えても必要人員をはるかに上回る人の手があり、だらだらとした気怠い時間が流れていた。

例えば、看板に紙の花を付けるその方法を巡ってでさえ、延々と話し合いが続く。
順番は赤白赤白がいいのか、ピンクを混ぜるのか、花は足りるのか、足りないならいまから作るのか、と言った感じで、誰かが「どうせ誰も見ちゃいないわよ」と言い出すと、「それもそうね」と作業が進んだ。
結局、大量に余った紙の花は翌日、ゴミ袋の中にあり、なぜ花を付けたまま、埃をかぶらないようにビニールがけするなりして、来夏まで保存しておこうと思わないのか不思議だった。

夕方の交通警備が終わると、本部へ行けと言われて、そこで弁当を貰った。すぐにビールをつがれ、コップで二杯飲んだ。最近のわたしは毎晩、アルコールを飲んでいるが、わたしにはビールは合わないのか、酔いはしないが飲み直したい気分になって、部屋で梅酒を飲んだ。
網戸越しに聞こえる炭坑節をBGMに、三年前の夏を思い出していた。
わたしは夏に引っ越しをして、その日はたまたま納涼祭だったのだ。
あの日はよく晴れていた。

日曜日は空模様が悪く、時折激しく降り出す雨の中、また気怠い気分で片付け作業をした。
作業は午前中で終わった。
午後、雨足が鈍ったタイミングで車で買い物に出かけた。
雑木林を抜ける一本道、わたしは車のウインドウを全開にした。
ひんやりとした空気が心地よかったが、すぐに雨が強くなって、窓を閉めた。
雨の日曜日、道路はどうしようもなく混んでいて、わたしは行き先も道順も変更した。
道中、たまたま見かけた酒屋に入る。
薄暗い店内は思ったより広く、高い棚にずらりと並ぶお酒の列は、図書館みたいで、ラベルと瓶の形を眺めているだけでけっこう楽しかった。
わたしは二種類の梅酒を買った。

夜、近所の台湾料理屋で早い夕飯を食べた。
料理と一緒に頼んでいない西瓜が出てきた。
西瓜を食べるのは今夏初めてだった。
日本式というものがもしあるなら、西瓜の切り方は三角か半月だろうが、店で出された西瓜はそのどちらでもない不思議な形で、最初から塩が振ってあった。
デザートの西瓜まで残さず食べ、奥さんの「アリガトーゴザイター」という言葉に見送られて、わたしは店を出た。

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【734/1973】
by tabijitaku | 2009-08-02 20:38 | 私が私であるための1973枚(絵)


中庭、それは外。でも内側


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