カテゴリ:家族の足( 5 )

家族の足 … 長男

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土曜の夜、珍しく長電話をした。
受話器を置いたのは朝方の5時だった。
わたしはどんなに疲れていても連続睡眠は5時間しかとれないので、朝5時に寝たら午前10時に目が覚める。

土曜日は映画を観にいった。
「有頂天ホテル」のチケットがSOLDOUTだったので、「スタンドアップ」を観た。
鉱山で働くシングルマザーが様々な性的迫害に耐え、裁判に挑む話。
「エリンブロコビッチ」と設定が似ているが、よりシリアスな作品に仕上がっている。
原題は「North Country」
わたしは無闇に原題を変えるのはあまり好きではないが、
クライマックスで邦題の「スタンドアップ」という言葉は大きな意味を持つ。
目頭が熱くなるシーンだった。

日曜日は午前10時に起きたあと、ソファを注文した。
わたしの部屋には椅子が一脚しかない。
暮れに弟が部屋に来たとき、これではいかん、と思った。
ソファはネットで注文した。
セミオーダーメイドで自分の好きな色を2つ選んで、ソファの座面と側面の色を変えることができる。
わたしはオレンジとブルーを選んだ。
これはポーランド旅行で使ったアエロフロート航空のイメージカラーでもある。
子どもの頃、東海道線の深緑とオレンジ色の配色がすごく嫌だった。
聞きかじりの知識では確かミカン畑をイメージした配色だったと思うが、深緑とオレンジでは合わないと思ったのだ。
だいたいオレンジ色は他と合せにくい。
同じ暖色系の赤や黄色となら合うが、紫にも緑にもピンクにも合わない。
オレンジと青や水色との組み合わせを知ったとき、わたしは初めてこの色が好きになった。
ソファ専門店ではオレンジ色は人気があるらしく、生地が欠品してしまったという。
「他の色にしますか?」と言われたが、オレンジがいいので1ヶ月以上待つことにした。

金曜日は職場にAmazonからCDが届いた。
「山田洋次監督作品サウンドコレクション」
この中にかねてから探していた一曲が納められている。
映画「息子」で流れたサウンドで、日本映画音楽の巨匠松村禎三氏の楽曲。
わたしは去年、引越を直前に控えダンボールで山積みになった部屋で、「息子」のビデオを借りてきた観た。
なぜだかわからないが突然無性に観たくなったのだ。
改めて観ると、音楽の素晴らしさに唸った。
すぐに「息子」のSoundtrackを探したが、見つけることはできなかった。
次に作曲家の松村氏のCDを探し、一度は見つけてネットで注文したが、後日廃盤の知らせを受けた。
ポーランドへ向う飛行機の中でわたしは弟に「どうしても手に入れたい廃盤のCDがあったらどうする?」と尋ねたら、都内の大型CDショップを一軒づつ回ってみるよ、と言われた。
ところが、帰国後もしかしたらと思って検索した「山田洋次」というキーワードで、件のサウンドコレクションがヒットしたのである。
ほんとうに欲しいものに出会える幸運、そしてそれを手にすることができるという更なる幸運。
若いうちは幸運から見放されることにばかり神経質で、幸運そのものについてあまりにも鈍感だったと思う。

日曜日、きょうは床屋に行った。
散髪中に完全に眠ってしまった。
髪を切ってくれたのは女性だった。
「ゆうべは遅かったんですか?」と聞かれ、「ええ、まぁ」と言葉を濁すと
「飲んじゃいましたか?」と言われる。
わたしがなおも曖昧な態度を見せると「ああ、お仕事ですか。たいへんですね」と言ってひとり納得していた。

つい先ほど、伯母からメールが届く。
新年会で久々に会ったとき、わたしは伯母に3冊の本をプレゼントした。
そのお礼状だった。
この伯母から貰うお年玉は子どもの頃、正月のいちばんの楽しみだった。
伯母のお年玉は現金とは別に靴や本のオマケがあるのだ。
わたしにはそのオマケが嬉しかった。

年が明けてから買った無印の卓上カレンダーは休日が赤く塗られていない。
休みの日がわかりにくい。
カレンダーを見ると、そこには規則正しく数字と曜日が並んでいて、
金曜日の次の日は必ず土曜日だし、その翌日には日曜日がある。
例え数字が赤色じゃなくても、昨日が土曜日だったからはきょうは日曜日だ。
いまは日曜の夜だ。

【ずっと同じ場所をぐるぐる回っているような気がする】

わたしにそう言った人間はかつて2人いた。
ひとりは弟、次男のほう。
もう1人のひとは、結婚しても同じ場所をぐるぐる回り続け、離婚したことで
今度は別な場所でぐるぐる回り始めたと言っていた。
彼女はいまもどこかでぐるぐる回っているのだろうか?
それとも回ることを止めてしまったのだろうか?

macを買ってから、音楽はもっぱらiTunesという音楽ソフトで聴くようになった。
この週末、わたしの部屋では「息子」のサウンドが絶えずリピートしてmacから流れていた。

ブログ【雨日和】のルツさんに薦められた「パイロットフィッシュ」という文庫を読んだ。
なんでもこの小説の主人公、ルツさんに言わせるとわたしとイメージが重なるらしい。
ちなみに主人公はエロ雑誌の編集者。
実はこの本、ポーランド旅行に持ってゆき、わたしより先に次男が読んだ。
「…俺に似てるか?」と訊いたら、確かに兄は編集者タイプではあると思う、という返事が返ってきた。
主人公は41歳。
わたしはいま32歳だ。
エロ雑誌の編集ではなく、会社勤めでいまは経理をやっている。
経理を始めて1年と1ヶ月。
ルツさん、わたしは彼と音楽の聴き方は似ているかもしれない。
オニオンスープは作れないけど、作れたらいいな、と思った。
過去を振り返る夜もあるし、些細な日常の終わりの夜に幸せを感じることもあります。
部屋に水槽はありません。
たぶんこの「長男の中庭」がわたしの水槽です。



50pictures in Polandについて。
最期の1枚の選択に迷っています。
本当はポーランドシリーズを完結させてから、きょうの「家族の足」をupする予定でした。
こちらも一応シリーズなので区切りをつけたかった。

「長男の中庭」はあと1回、ポーランドの写真をupしたら、休止します。

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by tabijitaku | 2006-01-15 23:05 | 家族の足

家族の足 … 三男

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家族の足シリーズ第4弾。
12月に結婚する三男登場。
彼の“足”を表現するのはとても難しかった。
理由は被写体が良すぎるからである。
兄のひいき目と思われるかもしれないが、実のところわたしは彼をひいきにする理由などないので、やっぱり彼はいいモデルなのだ。

三男とは昨年10月に佐渡島へ2人旅に出た。
わたしから誘ったのだ。
7つも年の離れた弟だから、子どもの頃からケンカをした記憶もない。
次男に比べると接する時間はうんと少なかったのは確かだ。
だけどわたしは三男が思っている以上に彼に興味を持っていた。
彼の中にある“わたしにはない何か”
彼の中にもある“わたしと同じ何か”
純粋に興味があったのだ、兄弟のDNAに。

三男はどう思っているかは知らないが、わたしはあの機を逃さなくて本当によかったと思う。
あれは新潟中越地震が起きるちょうど一週間後のことだった。


さて、これは以前三男と話していて思いついた雑文。
思いのほか、ウケが良かったのでここで紹介したい。
(弟よ、改訂版だよ)



有名な童話『3匹の子豚』には一応「備えあれば憂いなし」という教訓があるらしい。
だがあれは「何の教訓も考えずに」作られた物語であったほうがいいと思う。

藁で家を建てたかった長男。
木の家にこだわった次男。
レンガの家に住みたかった三男の話。

3匹がそれぞれ自分の住みたい家を思い思いに作るという
『テレビチャンピオン〜マイホーム王選手権』(ゲストは渡辺篤史)的な企画モノにしたほうが断然面白い。

一方、この物語には理不尽なオオカミも登場する。
乱暴モノのオオカミによって、長男と次男の家は壊されてしまうのだ。
それは困る。

よって企画を変えるべきである。
『テレビチャンピオン〜狼にも負けないセイフティホーム王選手権』

慎重な長男ブタはまず防犯性を考えたうえで、地面の上に家を建てるという既存の発想を捨てた。
オオカミの襲撃も完璧に防げる地下シェルターを作った。

インターナショナルな次男ブタには長男とは別な“発想”があった。
オオカミから身を守るために彼がしたこと。
それは「ブタ肉を食べてはいけない国」へ移住することだった。
次男ブタはイスラム国家へ旅立った。

思慮深い三男ブタもまた二匹の兄ブタとは違う“発想”で家を建てた。
彼が建てたのは、4世帯住居の鉄筋2階建てのアパートだった。
そしてその1室を狼に貸した。
三男ブタは、オオカミは「ブタを喰いたい」のではなく「住む場所がなくて困っている」のだと考えたのだ。

〜 1年後 〜

長男ブタの地下ハウスは防犯上は完璧だったが、
「湿気が多い」のと「電気代」かさむのが問題だった。
長男は太陽の光に恋をした。

イスラム国家へ移住した次男ブタは、もちろん誰にとって喰われる心配もなかったが、
イスラム教には他にもいろいろ食べてはいけないものがあり、食生活で苦労していた。
次男は同じカルチャーを持った仲間を心から欲した。

その頃三男ブタは建物を増築して、いっきに5階建てにした。
トンテンカンテン…

〜 3年後 〜

次男ブタが「もうコーランは聴きたくない」と言って日本に帰ってきた。
住む場所がないので、三男の建てた「高層住宅」へ身をよせることになる。
次男は驚いた。
オオカミが管理人をしていた。

次男は思わず言った。
「オオカミに…?」
三男は「そうだね」言った。

〜 5年後 〜

長男ブタが「太陽の光が欲しい」と言って地上に現れた。
行く宛がないので、三男の建てた「集合住宅」へ身をよせることになる。
長男は驚いた。
イスラムに行ったはずの次男がオオカミの娘と同棲していた。

長男は思わず言った。
「オオカミと…?」
三男は「そうだね」言った。

それから月日は経ち、三男は造り酒屋の娘さんと結ばれることになった。
三男は初めて考えていた。
自分がいちばん住みたい家を。暮らしてゆきたい場所を。
藁の家もいいかもしれない。
木でできた家も素敵じゃないか。
三男はほんのきまぐれで長男と次男の意見を聞いてみようかと思った。
しかし2人の兄ブタはその頃ポーランドにいたのだった。
ぶーぶー。

おしまい



その三男から先日1年ぶりにメールがきた。
てっきり結婚の報告かと思ったら、わたしのために買った去年の誕生日プレゼントが出てきたという知らせだった。
今年の誕生日を素通りにしているところが素敵だ(笑)

手紙の書き出しは「もう1人いた弟です」だった。
どうやらわたしのほうも「もう1人いた兄」として認めてもらったようだ。
結婚おめでとう。
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by tabijitaku | 2005-11-18 00:26 | 家族の足

家族の足 … 母

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初のシリーズもの(猪木さんをのぞけば)
家族の足。第三弾…母です。
第二弾の父の話で祖父の話を書いたから、というわけではないけど
今回は母を通して祖母の話を書きたい。

父方の祖母の話である。

父と婚約をした直後、母は仕事で仙台へ出張に行くことになった。
仕事は結婚後辞めることになっていたようだ。
仙台は父の実家、当時祖母が1人で暮らしていた。
母は仕事帰り、義母の元へ挨拶に向う。

いまと違って仙台まで列車で何時間もかかった時代である。
仕事を終えた母は疲れきっていた。
家に通され、炬燵に入ったところで、猛烈な睡魔に襲われたという。
しかし、婚約者の親のいる前で寝るわけにはいかない。
祖母が台所でお茶をいれている際、母は思わずテレビのスイッチをつけた。
番組は何でもよかった。
一時的にでも眠気をさますものであれば。

そのときテレビではうってつけの番組がちょうど流れていた。
プロレス中継である。
もちろんモノクロテレビの時代。
母はプロレスに興味などなかったが、とにかく睡魔と闘うために食い入るように画面を見続けたという。
そんな母を見て祖母はたいそうビックリしたそうな。

わたしがこの話を母から聞いたのは今年に入ってからである。
真っ先に“聖夜”という言葉が浮かんだ。

昭和の茶の間。
夕餉の匂い。
モノクロのプロレス中継。
義母と嫁のギコチない会話


いささか話ができすぎているのだが、この日は12月24日。
本当に聖夜だったのだ。

母は記憶の鮮明なひとである。
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by tabijitaku | 2005-11-13 23:06 | 家族の足

家族の足 … 父

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わたしが生まれる遥か前に亡くなっていた父方の祖父は
英語教師であり、地方新聞に文章も書いていたという。
そして旅をするひとだったらしい。

わたしの父はあるとき祖父の友人に会って
長男の、つまりわたしの話をしたという。
炭坑や廃墟を求めてあちこち出かけている。
そんな話をしたらしい。

さすが先生のお孫さんだ。探究心がおありでいらっしゃる
そう言ってたよ、と父は笑ってわたしに話した。

記憶が確かなら、わたしが父と旅に出たのは
その言葉を聞いたあとだったような気がする。

一緒に行かない?と声をかけたら父は「おう」応えた。

わたしのズボンを履き
わたしのトレッキングシューズを履いて。

場所は松尾鉱山跡地。
父が生まれた場所はここからそう遠くない。
そしてそこは祖父が教鞭をとった地。
祖父が執筆活動した場所。
つまりは、そこがわたしのルーツだ。
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by tabijitaku | 2005-11-10 22:22 | 家族の足

家族の足 … 次男

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次男は12月に京都から2度上京する。
一度目は三男の結婚式のため。
二度目は長男と旅に出るため。


“ポーランドに行かないか?”


と言ったら、彼は「いいね」と言ってくれた。
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by tabijitaku | 2005-11-10 00:08 | 家族の足


中庭、それは外。でも内側


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