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ウサギは「それを愛せ」と言いました。

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私が生まれ育った町にはエレベータが無かった。
5階建ての団地にはもちろん階段しかなく、当時駅前にあった忠実屋は2階建てのため、エスカレーターしかなかった。(たぶん)
それ以上に高い建物が無かったのだから、エレベーターが無くても不思議は無い。
ただ、私は子供の頃、わりと両親に連れられて都心に行くこともあり、百貨店やら池袋のサンシャイン、東京タワーで、エレベーターという「乗り物」は経験済だったので、小学生の頃、クラスメートに「隣町のマンションまでエレベーター乗りに行こうぜ」と誘われたとき、自分がいったいどんなリアクションをしたのか気になる。
隣町には高層のマンションがあった。敷地内にプールのあるマンションで、このプールにも住人に紛れて何度か侵入したことがあった。
私が住んでいた団地から自転車でせいぜい10分ぐらいの距離だったが「学区」が異なり「市区町村」が違えば、それは子供にとっては自転車で行く大冒険だった。
4人の冒険者のうち、私の記憶では少なくとも私を含めて2人はエレベーターがフリーフォール(という言葉はもちろん知らなかったけど)ではなく、ただの輸送機であることを知っていたと思う。
ただ、ワクワク感というものは伝染するものであり、知らないマンションに侵入してエレベーターに乗る、というミッションはそれなりに非日常的な甘美な味がしたものだ。

4人の中では私が最も小柄で、プロレスごっこをするにも、ローラースケートをするにも、とにかく身体を動かすことに関しては全て、いわゆる味噌っかすだった。
背の高いムラカミ君とドギ君。スバッしこくて運動神経のいいフジモリ君。
みんな私より野球もうまかったし、駆け足も早かった。
私が彼らに優っているのは絵が上手だということ算数が得意だということぐらいで、当時はそれではクラスで人気者にはなれなかった。

さて、話を隣町のエレベーターに戻すと、どうしてそうなったのかは記憶にないが、4人のうち1人ドギ君がエレベーターに取り残されてしまった。
早い話が降りそこねたのである。
しかし、問題は彼にとって、それは「人生初」のエレベーター乗車だった。
さながら彼にとっては「落下する棺桶」のように恐ろしかったのだろう。
扉の閉まったエレベーターの中から聞いたこともない叫び声がした。
ドギ君がパニックを起こして泣き喚いているのだ。
私たち3人は、ドギ君がパニックを起こしたことにパニックを起こした。
階段を駆け下りながら、ドギ君の名前を連呼した。
そのときエレベーターの中から、それだけはハッキリと聞き取れる声がした。

「お母ちゃん、助けて!」

エレベーターはもちろんどこかの階で普通に止まり、ドギ君は無事救出されたわけだが、あのとき私たち3人は誰もが耳に残っていたはずにドギ君の「お母ちゃん、助けて!」には触れなかった。
子供ながらにそれを口に出すのはルール違反であると思っていたのだろう。

瀬戸の際で、声を出すか出さないかは別にして、浮かぶ名前、浮かぶ顔はたぶん1人しかいないのではないか?
この人がダメならあのひとに相談しようとか、そういうのはまだ頭で考えられるレベルで、泣き叫ぶ状況下でひとは取捨選択をしていられない。

年の瀬になると、懐かしい顔や声をふと思い出す。
自分は瀬戸の際で、いま誰の名前を呼ぶのかと自問し、やがて自問したことを後悔する。

件名について。
ウサギは「それを愛せ」と言いました。
英文法として本当に正しいかは分からないけど、
The rabbit said "Love it!"
賀状を作っているときに気づいた言葉。ちょっと韻を踏んでて面白い。
不思議な国のアリスのせいか、私にはウサギは何かを導いていくようなイメージがあるのだ。
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by tabijitaku | 2010-12-31 18:48 | 私が私であるための1973枚(絵)

墓参

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仕事納めの翌日、小平霊園に行く。
その方にはお会いしたのは2度しかなく、その方と一緒に働いたことは1度もないが、彼は私の仕事先の先輩で、今年亡くなった。
寿司を奢ってもらったことが1度。神戸から東京行きの飛行機を取ってもらったことが1度。
飛行機は初めて乗るビジネスクラスだった。
個人的な理由で葬儀に参列できなかった悔いがあり、そのケジメというわけではないが、年内にどうしても墓前に手を合わせたかった。

墓石の名前は私の知っている姓ではなく、生前のその方については私が知っていることはほとんど無く、知らないことだらけなのだけど、最期になってしまった電話でのやりとりが未だ忘れられない。

「辛いことがあったらいつでも相談に来い。力になるから」

私にそう言った彼の身体は過度のアルコール摂取がたたってもうボロボロで、生き方も刹那的で、医者でなくても、もう長くはないと分かってしまうようなひとだった。

彼が亡くなったと聞いたとき、1度も相談しなかった自分が薄情だと思って哀しかった。
あのとき万事うまくいってたわけでもないのに、万事うまくいっているような口ぶりで彼からの最期の電話を済ませてしまった自分が情けない。
おかしな言い方かもしれないが、横柄な言い方かもしれないが、自分の人生の辛さを苦みを誰かに分かちあえる器量が無いようでは人の交わりの中で生きていくことはできないと思う。
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by tabijitaku | 2010-12-30 08:41 | 私が私であるための1973枚

橋の上から

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by tabijitaku | 2010-12-20 06:37 | 私が私であるための1973枚

立つ葉

散ってなお 
芝を彩る
もみじかな

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by tabijitaku | 2010-12-19 17:33 | 私が私であるための1973枚

デフラグ

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「こんなだったんだろうな」と思って、1年の早さを感じる。
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by tabijitaku | 2010-12-16 22:19 | 私が私であるための1973枚

マジシャン

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by tabijitaku | 2010-12-13 23:29 | 私が私であるための1973枚

正義の管轄

この街を守るひとと、この星を守る彼
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「オレオレ詐欺ですか?そのあたりは110番して下さい。3分間では解決できそうにありませんので」
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「師走だ、シュワッチ!」
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by tabijitaku | 2010-12-11 08:23 | 私が私であるための1973枚

今年観た動画No.1

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この1枚の写真を見て「ん?」と思った方は、なかなかの観察眼だと思う。
上の写真の被写体が何なのかは次の1枚でお分かり頂けるだろう。

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まだ分からないという方のためにもう1枚。

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1枚目はウルトラマン型の街灯。
2枚目はバルタン星人。3枚目はウルトラセブン。
こんな素敵な街灯が立ち並ぶのは東京の祖師ヶ谷大蔵駅から続くウルトラマン商店街。駅前にはウルトラマンがいて、商店街の入口と出口にもウルトラマンとゾフィがいる。
他に観るものはあまりないのだけど、昭和の雰囲気が溢れる商店街は懐かしいウルトラマンの情景に寄り添っていると思う。団地もあるし、とんねるずの木梨さんのご実家(自転車屋さん)もある。

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私はウルトラマンにはなぜか切なさと哀愁を感じてしまう。
それはただ単純に昭和のヒーローとしての郷愁なのかもしれないけど、私はこのヒーローが本質的に孤高だからなような気がする。
ウルトラマンはラストで必ず去ってゆく。
地球人と手を取り合って喜ぶ場面が無い。
ドラマはウルトラマンが去ることで完結する。
地球の平和を守るウルトラマンが宇宙人であるという事実。
だから彼は宇宙に帰るしかない。
このあたりは、怪獣ではなく宇宙人との戦うのが基本ストーリーのウルトラセブンでより、その「葛藤」が浮き彫りになる。

さて、今年いちばん鳥肌ものの動画はこれ。
どんな流出画像よりも私にはこれだった。

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by tabijitaku | 2010-12-07 23:57 | 私が私であるための1973枚

不法侵入の紅葉

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罪悪感はそのフェンスを越えたことよりもむしろ、これだけ美しい風景を独占していることに対して。
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by tabijitaku | 2010-12-05 21:15 | 私が私であるための1973枚

やさしい嘘と贈り物

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たまたまがいくつか重なって、教会でゴスペルを聴いた。

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黒人の歌手が歌うゴスペルが聴けるならと思ったのだけど、「きよしこの夜」も「そり滑り」もびっくりするぐらい流暢な日本語で歌われた。

高校の時、何の会だったのかは憶えてないが、生徒会長が皆の前で独唱するのを聴いたことがある。
曲はビートルズの「Yesterday」で、わざわざ英語の歌を選曲したことに、体育館に「こいつ、賢い子だなぁ」という空気感が漂った。しかしそれは歌い始めですぐに失笑に変わった。
生徒会長は歌い出しこそ「Yesterday」と歌ったが、後は全て日本語で歌ったからだ。
さすがに「イエスタデイ」という6文字は「きのう」にも「さくじつ」に訳して歌うことはできなかったのだろか?
でも彼がもし「Yesterday」を普通に英語で歌っていたら、私の記憶には残っていなかったかもしれない。

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帰りの環八は夕暮れからあっという間に夜に変わった。
私が初めてひとり暮らしをしたアパートは、すぐ近くのビルの屋上にコカコーラの看板があった。
最初からすごく気になっていて、ある日昼間と夜の2回写真を撮りに出かけた。
そしてその写真をとても気に入ってくれたひとがいた。
旅先で撮った特別な風景でもなく、決定的瞬間を捉えた写真でもない。ただ撮りたくて撮った近所のコーラの看板を好きなひとに褒められたことは、買ってきた歯ブラシを褒められているような気恥ずかしさと幸福感があった。
道を走っているだけでも思い出すことがある。

教会で宣教師が言っていた。
日本には「忘年会」という風習があるように、1年を清算して忘れてしまおうという許しの発想があるのに対し、キリスト文化のクリスマスには今年1年を思い出して感謝するという発想が根本としてあるらしい。
「忘却」と「感謝」
この2つのキーワードにぴったりと映画がある。
「やさしい嘘と贈り物」は2010年おすぎさんが最も泣ける映画に選出した作品。
興味のある方は、ぜひ予備知識ゼロでの鑑賞を薦めたい。映画のホームページを観るのは特に厳禁…だと私は思う。
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by tabijitaku | 2010-12-04 23:54 | 私が私であるための1973枚


中庭、それは外。でも内側


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