貝殻から音が聴こえる理由
この昭和の香りが漂う入り口は、蒲郡にあるファンタジー館。
大型駐車場がいくつもあったりするので、一昔前はそれなりの観光立ち寄りスポットであったのろう。(失礼ながら完全な珍スポットにしか見えないのだが…)
ここは「貝」のテーマパークである。無数の貝が奇妙な飾り付けで展示されている。
いま久々に観ているドラマがあって、先日観た放送にその「貝」が出てきた。
女の子が貝殻を耳にあてて「海の音がする」というシーンだった。
子供の頃、同じことをした経験のある方は多いだろうが、わたしはこのロマンティクな回答があまりにも鮮やかすぎて、なぜ音がするのか疑問を持たずに大人になってしまった。
調べてもらえばすぐわかるが、音の理由はいわゆる共鳴現象で、だから貝殻じゃなくても自分の掌を卵を包むように丸めても、ガラスコップを耳に当てても、サーというあの音は聴こえる。
だけど、貝の中に海があるという発想の前に、貝を耳に当ててみたその最初の行為が面白い。
よく見ると人間の耳は貝殻に似た形をしていると思う。
何か聴こえると思ったのだろうか?あるいは耳をあてる前に何か話しかけてみたひともいるかもしれない。
「聞こえますか?」
わたしのように貝殻から聴こえる音の正体を追求してこなかった方はけっこう多いのではないだろうか?
それは貝を耳にあてたとき海の情景を思い浮かべることや潮の香りを思い出すことがとても自然なことであり、多くの方がその「発想」に乗っかれたのだと思う。
世の中にはこういう真実より浸透している発想というのがあって、本当ではないことが本当になることを、わたし達は知っている。
朝と夕方には遠くの山が見えたり、夕日がやたらと大きく見えたり、雨上がりに虹が見えたり、もしかしたら、そういう日常の中にも、わたしが知っている本当よりも、素敵な本当を知っている方がいるのかもしれない。
by tabijitaku
| 2010-06-04 06:33
| 私が私であるための1973枚