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「マルホランドドライブ持ってった?」

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カンボジアは直行便があるぐらい、日本からの観光客が多い。
特にベストシーズンである年末年始は、街で日本人を探すのはスーパーでマヨネーズを探すぐらい簡単で、世界遺産においては花屋でバラを探すぐらいわかりやすい。

ゆえに「隣」の日本人の会話をよく耳にした。
ほとんどの会話は右耳から左耳へ抜けていったのだが、ただ1つ憶えていることがある。

それは姉弟の会話である。

ふたり旅(あるいは別な場所に他の家族がいたのかもしれないが)のようだった。
わたしも弟とポーランドへ兄弟で旅に出たことがあるけど、成人した姉と弟の旅はそれだけでも興味を惹かれた。下品を承知で聞き耳を立てた。

会話の断片から推測できたことがいくつかある。
1)姉と弟が離れて暮らしていること(姉も弟も実家を出ている)
2)二人が久々に再会したこと
3)弟は姉を「姉ちゃん」と呼び、姉は弟を「アンタ」と呼ぶこと
4)二人がともに音楽好きなこと

最後の音楽好きは、実家を出た姉が大量のCDを家に残してきたという会話のクダリがあったので。弟はその姉の置いていったCDをちょくちょく実家に行っては無断で借りているらしい。
弟がそのことを詫びると、姉は行き先が分かっているならいいよ、と応えた。

「マルホランドドライブ持ってった?」
「持ってる持ってる」
「アレ、音楽いいっしょ?」
「いいねー」

断片的に聞こえたその会話は、わたしのカンボジア土産となった。
「マルホランドライブ」はデビット・リンチがカンヌ映画祭で監督賞を獲った映画。
タイトルは知っていたけど、これまで観る機会がなかった。
リンチの作品はご存じの方ならお分かりだろうが、「親切」ではない。
「えー」という終わり方をちょくちょくする。
「ツインピークス」のテレビシリーズに夢中になった方なら、あの不可解な終わり方が記憶の片隅にあるだろう。
しかし、観客を放り出す力もすごいが、引っぱる力もすごいとわたし自身は思っている。
例えば有名な「ブルーベルベット」は人間の耳を拾う、という非日常的な出来事から始まる。「エレファントマン」はトラウマになるぐらい「残る」映画だ。
音楽では言えば前述した「ツインピークス」のテーマソングは名曲だし、映画のタイトルになった「ブルーベルベット」は、「バグダッドカフェ」の「コーリングユー」と並んで一度聴いたら耳鳴りがするぐらい忘れられない歌だ。

「マルホランドライブ」の音楽?気になる。

先週、TUTAYAでとうとうDVDを借りてきた。
映画はリンチワールド全開で、見終わってからモヤモヤが始まるような映画だった。
音楽はというと、姉と弟がよかった、というのはこの歌かな、と思う曲はあった。

真夜中にロウソクの炎が揺れているような哀しい歌声の曲だ。
というわけで本日の写真はかなり強引にこの写真。
実はこの近くで姉弟の会話を耳にしたのだ。

【199/1973】
by tabijitaku | 2008-01-22 07:48 | 私が私であるための1973枚


中庭、それは外。でも内側


by tabijitaku

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