片羽根を失くしたセミはなぜ飛べるのか?
小さな男の子が母親にめがけて駆けてゆく。
「ママ、セミの羽根を見つけたよ!」
男の子がそう言うと、母親は漫画みたいに後ろに飛び跳ねた。
この夏も蝉の多さに驚かされる。
朝も夜も、雨上がりでさえも蝉が鳴き続けている。
蝉の羽根は毎朝必ずどこかしらで見かける。
その朝もテラスに蝉の羽根が1枚落ちていた。
羽根の上に水滴が二粒。
ピエロの顔のように見えた。
羽根を一枚欠いた蝉はそれでも最期に飛んだのだろうか?
左右アンバランスな翼で飛ぶことは、航空力学に反するような気がする。
しかし、実は蜂も航空力学上は「飛べる構造」では無いという話を聞いたことがある。
ではなぜ、蜂は飛べるのかと言えば、あるひとは「蜂は自分が飛べるということを疑ったことがないから」だと言い、あるひとはもっとシンプルに「飛ぼうと思ったからだ」と答える。
蝉の羽根はよく見るととても美しい模様をしていた。
子どもはキラキラとした美しいものを見つける名人だ。
わたしは昆虫は苦手だが、玉虫の美しさには息を飲む。
玉虫の光沢は水たまりにこぼれ落ちたガソリンのように美しい。
さて件名。
「片羽根を失くしたセミはなぜ飛べるのか?」
もちろん答えなんて知らない。
わたしは蝉じゃないから。
でも、あえて答えるなら、片羽根で空を舞うような奴らはきっと「片方が無い」ではなく「まだ片方ある」と考えるんじゃないだろうか?
【467/1973】【468/1973】
by tabijitaku
| 2008-09-02 00:00
| 私が私であるための1973枚