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明日はヒゲを剃ろう

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ひとり暮らしを始めて8年だか9年になるが、「たぶん、これは買う必要ないだろう」と思っていたモノが2つある。
「ポット」と「体温計」である。
ポットは必要なときに必要な分だけヤカンで沸かせばいいし、体温計は熱があることぐらいわざわざ確かめなくても分かる、と思っていた。
その体温計を火曜日、わたしは初めて買う。
580円だった。
熱があることはわかっていたが、熱が上がってゆく感覚が不気味で、それを確かめたくて体温計を買った。
薬局の前で脇に挟んだら38.8度だった。
ヤバイよな、と思った。
会社を早退し、午後の診療開始と同時にかかりつけの診療へ向かう。
その場でもう一度熱を測る。
39.7度に上がっていた。
鼻の穴におみくじみたいな紙を突っ込まれて、しばらくしたら結果が出た。
「インフルエンザです」
あ、やっぱり。
「流行に乗っちゃいましたね」と初老の看護婦さんに言われた。
このときは頭はガンガンするし、寒気がするし、身体の節々が痛いし、鼻がえんえんとつまり続けるし、咳も止まらないし、怠いし辛いしで、例える必要もないのだけれど、家中の窓が開けっ放しで、水が出しっぱなしで、ガスが付けっぱなしで、テレビもラジオもパソコンのiTunesも目覚まし時計も付けっぱなしの鳴りっぱなしで、ヤカンの湯は沸いてるわ、インターホンは鳴るわ、電話も鳴るわ、あげくに夕立が来て部屋に雨が吹き込むわ、嗚呼、布団干しっぱなしじゃん!という状態だった。
医師の充分な説明のもと、わたしはタミフルを貰い、インフルエンザ専用の解熱剤を貰って、ブレーカーが落ちたように眠った。

解熱剤の効果はテキメンで熱は1日で下がった。
しかし、今度は嘔吐に悩まされる。
とにかく口にするものは全て吐いてしまう。
それでも水分補給はゼッタイなので、飲む、食べる、吐く、また飲むの繰り返しで、自分がまるで穴の空いたバケツみたいに思えた。

3日目のきょう、症状はだいぶ緩和した。
ようやく食事らしい食事をとれるようになり、吐くこともあるが、吐かずにすむ場合もあり、明日はヒゲを剃るか、なんて気分にもなってきた。
ただ医師には今週いっぱいの外出を禁じられている。
症状が和らいでから2日間は周囲への感染の恐れがあるという。
タミフルは5日間、飲み続けることが1つのプログラムでその意味でも治療はまだ終わっていない。
暮れの給与と賞与の支給を前に、違う意味で頭が痛かった。

しかしわたしにとって今さらながら大事な発見はあった。
穴を開けて気がつくのは周りにとっての自分の大きさではなく、自分にとって周りの大きさである。
助けられているなぁ、とまじまじと実感できたことは、いまの自分にとってよかった気がする。
会社の金庫の鍵はわたししか持っていない。
後輩がその鍵をわたしに家まで取りに来てくれた。
診療所から帰宅するわたしと後輩との時間がうまく合いそうになかったので、ウィダーインゼリーを20個ぐらい買っておいてくれよ、と頼んだ。
1個200円、20個で4000円。
手間賃も含めて5千円札を渡そうと思っていたら、彼は大きなビニール袋を2つ抱えてウチの前で待っていてくれた。
「お金はいいっス」という後輩に無理矢理持たせた5千円札だが、どうみてもそれでは足りなかっただろう。
いまはとにかく常温で飲むポカリスエットが命の水となっている。
病気を治すのは医者でも薬でもなく、個人の免疫力らしい。
元気になろう。
まずはそこからだ。
わたしにはすべきことがある。

【557/1973】
by tabijitaku | 2008-12-18 21:37 | 私が私であるための1973枚


中庭、それは外。でも内側


by tabijitaku

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