カテゴリ:私が私であるための1973枚(絵)( 57 )

そこに信号は無い。

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どこにでもあるごく普通のT字路。そのとき私の前に一台の車が止まっていた。
左折のウインカーが点滅している。
車はなかなか動かなかった。
ふと、腰を90度に曲げたお婆さんが前の車に近づいていき、運転席の窓をノックした。
車の窓を閉めていたわたしにはお婆さんの声は聞こえるはずもなかったが、その仕草からお婆さんが何と言ったのかはすぐに分かった。
お婆さんはきっとこう言ったのだ。

「ここに信号は無いですよ」

慌てて動き始めた前の車を見ながら、私も思わず赤面してしまった。

明石家さんまの運転手をしていた頃、ジミー大西さんは縦列駐車している車の後尾に付けて「大渋滞です」と言ったらしい。
車を運転しない方には理解しにくい話だろうが、わたしにもある。
一時停止線の前で車を停めたまま、そこに勝手に信号があると思い込んで待ち続けてしまうことが。
それにしてもあのお婆さんは、ドライバーがそこに信号があると思い込んでいる事によく気づいたのものだ。

信号は青がススメ。赤がトマレ。
進むか留まるかで迷っているひとは、そこに信号があることを疑ってみたりはしないのだろう。

ススメと言われても進めない事情もある。トマレと言われても留まれないタイミングがある。
しかし誰かがもしそのとき「そこに信号は無いですよ」と指摘してくれたら、目に映る風景は変わるような気がする。
きょうこの日を迎えて私は初めてそのことに気づいた。
信号なんか無いのに止まっていたのだ。
長い1年だった。
ああ、季節はやっと春。
外では愉快になるような強い風が吹いている。
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by tabijitaku | 2010-04-02 00:00 | 私が私であるための1973枚(絵)

蜘蛛と花火

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by tabijitaku | 2009-08-08 08:49 | 私が私であるための1973枚(絵)

西瓜

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週末の時間のほとんどをわたしは自治会という不思議な集まりに捧げてしまった。
地区の納涼祭があり、その準備にかり出されたのである。
普段、仕事を理由に会合にまったく参加していない後ろめたさもあり、週末は割り切って、言われるがままに机を運んだり、交通警備にあたったりした。
もしかしたら、わたしのような「にわか参加者」が多いのか、どう考えても必要人員をはるかに上回る人の手があり、だらだらとした気怠い時間が流れていた。

例えば、看板に紙の花を付けるその方法を巡ってでさえ、延々と話し合いが続く。
順番は赤白赤白がいいのか、ピンクを混ぜるのか、花は足りるのか、足りないならいまから作るのか、と言った感じで、誰かが「どうせ誰も見ちゃいないわよ」と言い出すと、「それもそうね」と作業が進んだ。
結局、大量に余った紙の花は翌日、ゴミ袋の中にあり、なぜ花を付けたまま、埃をかぶらないようにビニールがけするなりして、来夏まで保存しておこうと思わないのか不思議だった。

夕方の交通警備が終わると、本部へ行けと言われて、そこで弁当を貰った。すぐにビールをつがれ、コップで二杯飲んだ。最近のわたしは毎晩、アルコールを飲んでいるが、わたしにはビールは合わないのか、酔いはしないが飲み直したい気分になって、部屋で梅酒を飲んだ。
網戸越しに聞こえる炭坑節をBGMに、三年前の夏を思い出していた。
わたしは夏に引っ越しをして、その日はたまたま納涼祭だったのだ。
あの日はよく晴れていた。

日曜日は空模様が悪く、時折激しく降り出す雨の中、また気怠い気分で片付け作業をした。
作業は午前中で終わった。
午後、雨足が鈍ったタイミングで車で買い物に出かけた。
雑木林を抜ける一本道、わたしは車のウインドウを全開にした。
ひんやりとした空気が心地よかったが、すぐに雨が強くなって、窓を閉めた。
雨の日曜日、道路はどうしようもなく混んでいて、わたしは行き先も道順も変更した。
道中、たまたま見かけた酒屋に入る。
薄暗い店内は思ったより広く、高い棚にずらりと並ぶお酒の列は、図書館みたいで、ラベルと瓶の形を眺めているだけでけっこう楽しかった。
わたしは二種類の梅酒を買った。

夜、近所の台湾料理屋で早い夕飯を食べた。
料理と一緒に頼んでいない西瓜が出てきた。
西瓜を食べるのは今夏初めてだった。
日本式というものがもしあるなら、西瓜の切り方は三角か半月だろうが、店で出された西瓜はそのどちらでもない不思議な形で、最初から塩が振ってあった。
デザートの西瓜まで残さず食べ、奥さんの「アリガトーゴザイター」という言葉に見送られて、わたしは店を出た。

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【734/1973】
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by tabijitaku | 2009-08-02 20:38 | 私が私であるための1973枚(絵)

田んぼの戦士

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日曜の朝、起きたら真夏の太陽が出ていた。
横浜へ行く予定を変更して、道路地図を開いた。
行きたい場所があった。
映画「ディアドクター」のロケ地、茨城県の常陸太田市。
棚田の美しい場所である。
さて、バイクで行くか、車で行くか。
わたしは車にはETCを付けているが、バイクにはまだ付けていない。まだ、というのは既に1ヶ月以上も前に注文を出しているのだけれど、入荷の目処すら立っていないのだ。
従って車で出かければ、高速道路の割引が受けられるけど、バイクだとそれが無い。
でも、そんなことは関係ない。
暑い夏の日差しをめいいっぱい浴びて、クラクラするような夏日和をバイクで満喫することに決めた。

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わたしはライダーでは無い。
だからバイクスーツを着たりしない。
日焼けを気にせず、Tシャツで走る。
その結果、ハンドルを握った両腕は、きょう1日で真っ赤に灼けた。
ひりひりする。
でも、そんなこと関係ないよ。
夜、火照った肌を白ワインで冷やしてみる。
気持ちいい。これは今日の成果だ。

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通りから遠くにそれを見つけたとき、最初しゃがんで何かを拾おうとしている人形かと思った。人形にしては、珍しいその動作が気になってバイクのエンジンを止めた。
普段、わたしはバイクで旅に出るとき、カジュアルシューズを履いたりしないのだけど、この日はあまり考えもせず履いてきてしまった。
田んぼの畦道はところどころぬかるんでいて、油断すると足を取られそうになる。
でも、そんなことは関係ない。
だって、泥まみれ、汗まみれになることには慣れているじゃないか。

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それにしても近くで見るとかなりグロテスクな材質でできている。
これは、案山子なのか?

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オブジェなのか?
そんなことは関係ない、と彼はマイクで叫んでいる。

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叫んでいる。
ブームが去っても、一発屋でも、そんなことは関係ないよ、と。

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そんなのカンケーねー!

案山子にするなら、オッパッピーのほうが良かったんじゃない?

そんなのカンケーねー!

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そんなのカンケーねー!
そんなのカンケーねー!
そんなのカンケーねー!

ありがとう。
その言葉は勇気です。

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by tabijitaku | 2009-07-26 21:39 | 私が私であるための1973枚(絵)

わたしが中国に行きたくなるとき

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先週末、弟を連れて評判の餃子屋へ行った。
店の客は半数以上中国人で、作りは普通の店舗ながら、まるで市場のような熱気と活気がある。
餃子の味は絶品で、なのに値段もウソみたいに安い。
だからいつ行っても店は客でいっぱいなのだ。

客が帰った大テーブルを3人がかりで片付けるスタッフの姿にちょっとした発見があった。
一般的に日本のウェイター、ウェイトレスはお盆で食器を下げる。
お盆を使わずに皿を積み重ねて、両の手で絶妙にバランスをとりながら運ぶ店員もいる。
しかし、その餃子店の場合、お盆は使わない。
でっかいボウルを使うのだ。
そのボウルにとにかく食器も箸もそのまんま入れる。
それを3人がかりでやるわけだから、10名以上の団体が帰った後のテーブルも瞬く間に片付いてしまう。
飲食店にとって、もっとも大事なことがテーブルの稼働率だと考えるならば、彼らの方法は実に合理的で無駄が無い。
こういう光景を見ていると、わたしは中国に行ってみたくなる。

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【700/1973】
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by tabijitaku | 2009-07-16 00:15 | 私が私であるための1973枚(絵)

バーフライ

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好きな俳優は?
難しい質問だが、いまならすぐ応えられる。
ミッキー・ロークだ。
彼の(演じる)ダメ男ぶりは、ときに笑いをときに哀愁を誘う。
「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」のイカれた刑事も格好よかったけど、新作「レスラー」の身体も心もどんどん壊れてゆく晩年のプロレスラーの姿は胸を打つ。
もっと彼の映画を観たいな、と思っていた矢先、思いがけず手に入れたのは「バーフライ」のDVD。
チャールズ・ブコウスキーの自伝的な映画だと言う。本人が脚本を書き、カメリハ出演もしている。
どんな映画かと聞かれれば、始めから終わりまで飲んでいるだけの映画としか説明のしようがない。
とにかく主人公のヘンリーも、彼が愛するワンダもひたすら飲み続けている。
なのに、この映画は可笑しくも悲しい恋愛映画でもあり、ヘンリーの戦いの記録でもある。
深夜に部屋を暗くして、グラス片手にこの映画を観れば、きっとバーのカウンターに座ってヘンリーにスコッチを注いでもらっている気分になれるだろう。

音楽も素晴らしく、ダウンロードしたBooker T & The MGsの「Hip Hug-Her」を繰り返し聴いている。

映画のタイトルはバーの名前かと思ったら違っていた。
BARFLYは「酒場の常連」という意味らしい。
酒場にたかる蝿の意味から転じた言葉だろうか?こういう英単語の面白さは素敵だと思う。

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【699/1973】
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by tabijitaku | 2009-07-12 22:09 | 私が私であるための1973枚(絵)

バランス

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その店はオープンキッチンで、カウンター越しに畳み二畳分ぐらいの大きな鉄板で、シェフが調理する様子が眺められる。わたしはカウンターには座らずに、キッチンを斜め左前方に見据えるテーブル席に座ることが多かった。
週に1度は足を運んでいたこの洋食屋に、月に1度も足を運ばなくなった理由はハッキリしていた。
シェフが代わったからである。

元のシェフは50歳ぐらいの背の高い男性で、愛想がいいとは言わないが、店を出てゆく客に丁寧に頭を下げるひとだった。
そのシェフが若いお兄さんに代わり、浅黒の異国のアジア人に代わっても、わたしはたまにはその店に顔を出すことはあった。ご飯が上手に炊けていなかったときも文句を言わずに全部食べた。

先週金曜日、数ヶ月ぶりに足を運んだら、キッチンには初老の男性が立っていた。
キッチンが丸見えなので、シェフの言葉も客に聞こえる。

「これはハンバーグにベーコンをのせるんだっけ?」
「ソースはデミグラスでいいの?」

シェフが問いかけているのは、茶髪のウェイトレスだった。
このウェイトレスも数ヶ月前にはいなかったひとである。

料理が出てくるまでにだいぶ待たされれた。
出てきたハンバーグはこれまでより不格好で、少し焦げていた。
そして焼きそばの上の目玉焼きは黄身が崩れたまま固まっていた。
料理のことはよく分からないけど、何かが少しづつズレているような印象を受けた。
味の違いまでは言及しないが、わたしは崩れた黄身を見ていたら、何だかとても悲しい気分になった。

世界にはなぜだか「改悪」してゆくものが存在する。
そのまま残れない何かの理由があるのだろうけど、いいものが、良かったものが、好きだったものが形を変え失われてゆくのは本当に悲しい。

しかし、世界はやっぱりどこかでバランスをとってゆくものなのだろうか?
寡黙だったあの元のシェフはいま、別な店のキッチンに立っているかもしれない。
お店を出るとき、茶髪のウェイトレスは「お待たせして申し訳ございません」と言って、会計を終えたわたしに深々と頭を下げた。感じのいいウェイトレスだった。
また数ヶ月後に来てみよう。またシェフが代わっているような気がする。あのウェイトレスは代わっていなければいいけど…。

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【698/1973】
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by tabijitaku | 2009-07-11 21:33 | 私が私であるための1973枚(絵)

信号待ち

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車のフロントガラスの前を少女が横切った。
梅雨が始まる頃には、雨の匂いに夏が混じり始める。
少女が乗っていたあの乗り物の名前は何て言うんだっけ?と考えていたら、信号が赤から青に変わった。

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【676/1973】
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by tabijitaku | 2009-06-06 00:50 | 私が私であるための1973枚(絵)

どちらに投票しますか?

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どちらに投票しますか?
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それともあなたが?

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【554/1973】【555/1973】
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by tabijitaku | 2008-12-11 01:32 | 私が私であるための1973枚(絵)

抜けるような青空

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【548/1973】
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by tabijitaku | 2008-12-05 00:30 | 私が私であるための1973枚(絵)


中庭、それは外。でも内側


by tabijitaku

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